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三章　ベトナム

（35）ハノイ（アメリカの爆撃）　　ベトナム top

　ベトナム戦争にアメリカ軍が本格的に軍事介入した一九六五（昭和四〇）年から一九七三（昭和四八）年までの間に、アメリカ軍がベトナムを含むインドシナに投下した砲爆弾の使用量は一四二六万トンに達し、えぐられた土地は数百万ヵ所にのぼる。　これは第二次大戦で日本本土に投下した爆弾の九〇〇倍にあたる。

（36）「ベトナムのダーちゃん」 top

　一九六九年四月、十一歳だったチャン・ティ・ダーちゃんの住む南ベトナムの村でアメリカ軍の掃討作戦によって六〇人からの村人が殺された。
　妹と二人で難をまぬがれた彼女は山へ逃げ込み、その後、解放戦線兵士の助けで北ベトナムにたどり着き、孤児学校で学んだ。
　七五年の戦争終結後に別れ別れとなっていた妹のティンさんと再会し、ともに医療の道を志した。
　現在は中部にあるクァンガイ省の、生まれた村のそばにある小さな町で医師助手をしている。
　七五年二月に北ベトナムを訪ねた作家の早乙女勝元氏が九一年に再訪し、一六年ぶりの再会を果たした。（1991年撮影）

ペトナム戦争の最中に刊行され話題になった 『ベトナムのダーちゃん』(童心社刊) ダーちゃん（左）と再会した作家早女勝元さん 思い出を飾るダーちゃんの部屋

カンカイ省のダーちゃんの村に向かう ダーちゃんの村の小学校 まずしい教室だが子どもたちの目は輝いていた

（37）ソンミ記念館　　ベトナム top

　一九六八年三月にアメリカ海兵隊が、人口約七〇〇人のソンミ村を襲撃、村民が抵抗を示さなかったにもかかわらず五〇四人を殺害した。
　三年後にアメリカの軍事法廷で裁判にかけられた責任者のガリー少尉は終身労働の判決を受けたが、判決の翌日にニクソン大統領の命令により即時釈放されている。
　米軍はジャングルに濳む南ベトナム解放戦線兵士のゲリラ戦術で多くの犠牲者を出した。
　敵の姿も見えず、どこから弾が飛んでくるかも分からない状況下で兵士は恐怖に脅えていた。
　村落が解放戦線の拠点になっているとして、南ベトナム各地に掃討破壊作戦を繰り広げ、同じような悲劇があちこちで重ねられた。　（1991年撮影）

（38）ホーチミン（サイゴン）市　　ベトナム top

　旧サイゴン市。最高時五八万人の兵力を投入したアメリカ軍の戦略拠点の中心地であり、親米政権のべトナム共和国の首都であった。
　一九七五年四月二〇日に南ベトナム解放戦線部隊が、サイゴンに入城してベトナム戦争が終決した。
　一九四五年に始まったフランスとの第一次インドシナ戦以来、三十年間にわたる戦争の経て、ようやく真の独立をかちとった。
　この時にサイゴン市はベトナム独立の父であるホー・チ・ミンをたたえてホーチミン市と改名された。　（1991年撮影）

（39）クチのトンネル　　ベトナム top

　アメリカ軍は南ベトナム解放戦線に対して掃討作戦、戦略爆撃、枯葉剤散布などで猛攻撃を加えたが、これに抵抗する側は各地に地下トンネルを掘り、その中を移動して反撃を加えた。
　トンネルの内部には寝室や井戸や台所をはじめ、司令部や手術室まで備わっていた。
　第一次インドシナ戦争からおよそ二〇年をかけて掘り進めたホーチミン市郊外のクチの地下トンネルは、全長二五〇キロメートルにわたる。
　アメリカ軍はこれを破壊・寸断しようとガス攻めや水攻めをしたが、目的は達成できなかった。（1991年撮影）

（40）ツーズー病院　　ベトナム top

　アメリカ軍は一九六一年から七一年にかけて、南ベトナムの農耕地や解放戦線勢力が潜むジャングルに、猛毒のダイオキシンを含む枯葉剤を上空から大量に散布した。
　これにより二四〇万ヘクタール（ベトナム全土の約七・二％）の森林や農耕地から動植物の姿が消えたという。
　アメリカ軍は枯葉剤は人畜無害だと言い続けたが、散布された土地では奇形児の出産が多数報告され、作戦にかかわった米軍兵士も後遺症に悩まされた。
　八一年に結合双生児としてべ卜ちゃんとドクちゃんは誕生し、八八年に分離手術が行われた。
　ベトちゃんは寝たきりの状態だが、ドクちゃんは元気で自転車に乗れるようになっている。（1991年撮影）