四月空襲から敗戦まで

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五章　四月空襲から敗戦まで

親をなくし子供たちだけでリヤカーで逃げる

　三月一〇日大空襲の後も、Ｂ29少数機は念入りに東京上空に姿を現わしましたが、四月になりますと、またまた大編隊による爆撃の火ぶたが切られました。
　三月一〇日以降、帝都の息の根を止めようとする大空襲は二回ありました。
　その一回目は、四月一三日～一五日です。
　この間に東京の西北部と京浜地帯を襲ったＢ29は延べ七〇〇機。焼失した家屋は二二万戸にも達し、三月一〇日の被害に近かったのですが、死者数はその一割以下でくいとめることができました。
　三月一〇日の後、人々は防空・防火はもはや不可能で、逃げるが勝ちという気になったからです。
　政府や軍の発言は、信用されなくなってきたということでしょうか。

東京のあちこちにこうした廃墟がみられ、
多くの犠牲者を出した。

　もうこの頃になりますと、マリアナ諸島に基地をかまえたＢ29はびっしりと翼をつらね、約一〇〇〇機にも達していました。
　日参の都市のすべてを焼き尽す準備はすべてＯＫになったのです。
　五月二四～二五日。東京に向けて、最後の大爆撃が山の手地区を中心にして、東京の焼け残りの町をしらみつぶしに襲ったＢ29は延べ一〇〇〇機。
　投下された各種焼夷弾は、約七〇〇〇トンで、実に三月一〇日の四倍にも達しました。
　「これで全市街地の五〇・八パーセントを焼き、東京は焼夷弾攻撃のリストから外された」
と、アメリカ側の資料は書いています。
　その後の焼夷弾攻撃は、もっぱら地方都市に向けられ、Ｂ29は西に機首をひるがえして、横浜、大阪、神戸、名古屋と、大都市を次々と焼土に変え、さらに最後の仕上げといわんばかりに、まだ残された全国の小都市をしらみつよしに焼いていきました。
　八月六日、九日、テニアン島を飛び立ったＢ29は、広島・長崎に原爆投下。
　一五日、日本軍国主義はついに降伏しましたが、その朝まで、アメリカ軍の空襲は執拗に行われていたのです。

5月24～25日の空襲後の東京の中心。
白っぽい所は消失区域。

燃え上がる渋谷・広尾一帯