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雄物川と羽州街道
（國安　寛編　街道の日本史10　吉川弘文館　2001年刊）

1　関連地図 2　グラビア 3　あとがき �T章　秋田の南を歩く �U章　秋田南の歴史 　　　　前半 　　　　後半 �V章　秋田南三郡の地域とともに 付録　編者・出筆者など

奥羽・出羽の山々の沢水を集め、 横手盆地をへて秋田に至る雄物川、 川に沿った羽州街道。 その流域に生起した厳しい歴史を探り、 農業や舟運・鉱山に生きる人々の 生活の知恵を通して、 秋田南から全国にメッセージを発信。

1　関連地図 top

秋田県南半分の地図。
秋田へは東北新幹線の盛岡から、田沢湖→大曲→秋田（盛岡〜秋田間約一時間半）の秋田新幹線がある。
秋田県北半分には干拓で有名な八郎潟や、青森県との県境となる世界遺産の白神山地がある。
なおそちらは街道の日本史シリーズ9『北秋田と羽州街道』がある。

2　グラビア top

1雪の横手市街と鳥海山 秋田県東南部、雄物川支流の旭川（横手川）流域に位置し、元和元(1615)年一国一城令にさいしても北秋田の大館とともに破却を免れ、現在も小城下町的構造をたもっている。写真は横手城跡より市街を見下ろしたもので、中央に旭川（横手川）が蛇行し、遠くに白銀の鳥海山がみえる。「山と川のある町」は日本の原風景として多くの人々に親しまれている。横手市役所提供。
2院内銀山坑内作業絵図 　慶長年間(1596〜1615)に発見されたわが国有数の銀山で、阿仁鉱山とともに秋田藩の財政を支えた。 　最盛期の院内銀山町には1万5000人が暮らし、鉱山の作業に従事した。 　写真は、安政3 (1856)年のもので、蟻の巣のような張りめぐらされた坑道と、坑内の作業が描かれている。 秋田大学鉱業博物館蔵。
3『秋田街道絵巻』 　八橋村『秋田街道絵巻』は、荻津勝孝によって文化年間(1804〜18）ごろ描かれたと推定されている。 　写真の八橋村は、久保田城下（秋田市）の西北に位置し、元和2 (1616)年に久保田と土崎湊間に開通した八橋街道に沿った村である。 　一里塚と、街道を行き交う人々が描かれ、上方には佐竹氏の菩提寺である天徳寺がみえる。 秋田市立千秋美術館蔵。
4　秋田の竿灯祭り 　秋田市の山王大通りで、毎年月遅れの8月4日から3日間行われる盆行事。 　ねぶり流しともよばれ、竿灯の形態は稲穂をかたどり五穀豊穣を祈願したものがおこりとされるが、現在のような形となったのは文化年間(1804〜18）といわれる。 　青森のねぶた祭り、仙台の七夕祭りとあわせて東北の三大祭りとしてつとに有名である。 　秋田市役所提供。
秋の角館武家屋敷 秋田県仙北郡角館町

3　あとがき top

　当所の十文字付近より鳥海山（出羽富士）を西にみる風景は美しい。
　穏やかに流れる雄物川、南北を縦断する羽州街道とそれにつながる脇街道。
　その中に広がる稲穂の波。これがわがふるさとの景観である。
　もちろん、東西の山で自然の利を生かした生業もあった。
　しかし、地域にもいろいろと変化がある。
　近い歴史をみると、十八世紀ころ生まれた地主とし小作関係が十九世紀にさらに拡大した。
　温和な人々といわれる当地域でも、小作人が立上がったことは忘れてはならない事実である。
　一九四五年頃の農地改革によって、小作人は自営農民になって生産が向上した。
　しかし、米が過剰となり、美田も減反を迫られる今日である。
　一方で、農民は創意工夫を重ね、未来の農業を展望できつつある。
　本書では、佐藤信淵や小田野直武などの傑出した人物を取上げいない。
　むしろ、庶民的人物が主である。
　彼らは地域と密着した人々であり、泥と汗で体験し万人物群である。
　それこそ地域文化の根源であると認めざるを得ない。
　これからもその姿が生かされることを確信している。
　さて、本書の執筆者には、県内の歴史研究者として名を知られている人がいる。
　しかし、こつこつと自己の関心のある分野を研究している人石無視できない。
　本書を編集するにあたって発掘すれば、地域にも優秀な人材が多くいることを改めて認識した次第である。
　これらの人々は、他にいくつかの仕事をかかえ、その中で時間を割いて協力してくれた一群である。
　いろいろとご苦労をかけたことに改めて感謝している。
　最後に、秋田を一色ではなく、北とちがう南の地域を設定された編集委員と吉川弘文館の方々にお礼を申し上げたい。

　　二〇〇一年一月一〇日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　國安　寛