＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
Home　自動車発達史　 ジープ　銃器　手榴弾　大砲撃戦　人間魚雷　ロケット戦闘機　暗号戦

自動車発達史――自動車の二〇世紀
（『自動車の世紀』折口透著　岩波新書523　1997年刊）

　　　　　あとがき　　折口透　　一九九七年八月 top

　二〇世紀も終ろうとしている。それは激動の世紀だった。
　一九世紀半ばから急激に発達した科学技術が、社会のかたちを、そのあり方を劇的に変革した時期でもあった。
　“何々の世紀”とはよく耳にする言葉である。
　二〇世紀はじめは、“鉄の世紀”であり、第二次大戦後は、エレクトロニクスの、また情報の世紀ということになる。
　だが、自動車は一九世紀末の発明から一貫して二〇世紀と深くかかわり合っている。
　はじめは富裕階層の独占物だった自動車も、Ｔ型フォードの登場（一九〇八年）をきっかけに、庶民の手にとどくものとなり、人々の生活を、意識を一変させた。
　それはまた、（まずアメリカにはじまる）史上初の消費社会を生み出す原動力ともなり、二〇世紀のあり方を決定づけたといってよい。
　本書は、自動車と人間社会との関係のあり方、その推移を、純粋の歴史としてではなく、様々なエピソードを通じていわばノンフィクション的に、ほぼ経時的にたどろうと試みたものである。
　二〇世紀はまた、悲惨をきわめた二つの大戦によっても特徴づけられている。
　そして自動車なしには、飛行機や戦車といった新しい武器は生み出されなかったに違いない。
　それらは戦争の悲惨さを、さらに深刻化させる原因ともなっている。
　当然本書では、戦争と自動車の結びつきについて多くの頁をさいた。
　著者が自動車ジャーナリズムの世界に入ったのは昭和三〇年（一九五五年）のことだった。
　それから四十数年を経た現在までに、雑誌（一般誌を含む）や単行本に執筆したエッセイ風の記述は、（数えたことはないが）かなりの数に上っている。
　本書には書き下ろしの部分に加えて、すでに書いたそれらの文章を、加筆、削除もしくは訂正を加えて本書の全体の枠組みの中に組み入れたものもある。
　本書は自動車ジャーナリストとしての著者の、一つの区切りとしての著作という意味もある。
　今や自動車は、私たちの生活に深く踏み込んできている。自動車なしの社会生活は考えられないといってもよい。
　そして世紀末の現在、自動車と人間社会の関係、そのたどって来た道筋を振り返ってみるのも、決して無駄なことではあるまい。
　本書がそうした回想へのささやかな手助けとなるものとなれば、著者の大きなよろこびとするところである。
　最後に本書の執筆に当ってお世話になった、「新書」編集部の山田まりさんに厚く御礼申し上げる次第である。

　　　　　　参考図書（一部） top

･ The Complete Encyclopedia of Motor Cars; Ebury Press,1968
･ The Encyclopedia of Motor Sports, ed. G. N. Georgano; The Viking Press, 1971
･ The Land Speed Record, Peter J. R. Holthusen; Foulis, 1986
･ 100 Jahre Porsche, Dr. Wolf Strache; Bechtle Druck, 1980
･ Automobile and Culture, Gerald Silk; Harry N. Abrams,Inc., 1984
･ History of Aviation, ed. John W. R. Taylor & Kenneth Munson; New English Library, 1975
･ Encyclopedia of W. W. II, John Keegan; Bison Books Limited, 1977
･ Aircraft, Christopher Chant; Octopus Books, 1975
･ World Aircraft, W. W. II, Part 1 & 2, Enzo Angelucci & Paolo Matricardi; Sampson Low, 1978
･ Racing the Silver Arrows, Chris Nixon; Osprey Publishing Limited, 1986
･ Great Racing Drivers, ed. David Hodges; Arco Publishing Company, 1966