ドイツの爆撃機

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3　ドイツの爆撃機

　三人の有名なドイツ人爆撃機製作者、ユンカース、ハインケル、ドルニエは、一九三〇年代半ばに、本来民間用に設計された航空機、あるいは他国の目をくらますための見せかけの民間機で、十分な経験を積んでいた。
　このような回りくどい方法を取ったのは、ドイツの軍用機生産を禁止したベルサイユ条約を考慮したからであった。

JUNKERS Ju 87B2 “STUKA”　ユンカースJu87B2「スツーカ」
●全備重量：4,400kg全幅：13,80m、全長：11m　エンジン：ユンカース「ユモ」221D、U400馬力
武装：7.9mm機銃3　乗員：2　最高速度：393km/h（高度4,100m）実用上昇限度：8,000m、航続距離：600km　爆弾搭載量：700kg
有名な「スツーカ」は、第二次大戦初期にはポーランド、フランス､スカンジナビアなどにおける電撃作戦で驚くほどの成果を収めた。
しかし、イギリスとの戦いで「スピットファイア」や「ハリケーン」によって痛めつけられ、攻撃の最前線から退いた。しかしその後、
クレタ鳥の戦いなどに参加レ対船舶攻撃で大きな成功を収めた。

1 重爆に力を入れないドイツ top

　スペイン内乱が、新生ドイツ空軍に貴重な経験を与えた。
　ドイツは、航続距離の長い重爆撃機には関心を示さず、ヨーロッパ戦線の作戦に使用された比較的小型の戦術爆撃機に、終始、全力を注いだ。
　第二次世界大戦の終わり頃には、大型爆撃機の原型機と多少の生産機が現われた。
　六発の大型爆撃機ユンカースＪu390は、一度ニューヨークから一六キロの地点まで飛行したことがあり、強力な夜間爆撃隊の基礎となった。
　メッサーシュミットＭe264は、アメリカの東海岸を攻撃できる爆撃機として特に設計され、四発で全幅四二・三メートルの縦横比の高い主翼を備えていた。
　しかし、ドイツ軍は、このような爆撃機の開発には、ほとんど力を注ごうとしなかったので、しだいに姿を消していった。
　一九四三年以降、少数機生産された沿岸哨戒および偵察爆撃用の四発Ｊu290と、同年配備されたハインケルＨe177をのぞいて、ドイツ爆撃機は全て単発あるいは、双発に限られていた。
　Ｈe177は、唯一の長距離戦略爆撃機で、大戦中生産に移されたが、連結エンジン――エンジンが、二つのナセルの中に対になって収納され、各々一対のエンジンが一つのプロペラを駆動する――に問題が起きやすかった。
　この対エンジンに火がつきやすく、そのため実力を発揮することができなかった。
　大戦勃発時、ドイツ空軍に貢献した主力爆撃機は、双発のドルニエＤo17、Ｊu88、Ｈe111および単発のＪu87急降下爆撃機であった。
　さらにＪu86があったが、スペイン内乱で見せた貧弱な性能によって、対戦闘機織に向かないことが明らかになった。
　後のＪu86ＰやＪu86Ｒには、かなり改良がほどこされたが、それでも単に偵察に適しているというだけであった。
　これらの利点は、高々度で飛行できることであったが、それは、翼幅の増大、過給機つきディーゼル・エンジンおよび二人用の与圧室のおかげであった。たとえば、二二・二メートルから三一・五メートルに翼福の伸びたＪu86Ｒでは、実用上昇限度は、一万四七〇〇メートル以上であった。
　戦争も終わりに近い頃、Ｊu290やＨe177以外に、配備機の中で唯一注目に値する爆撃機は、世界最初の実用的ジェット爆撃機、アラドＡr234「ブリッツ」（稲妻）であったが、戦闘には、数回使用されただけだった。
　この機よりも重要な役割を果したのは、メッサーシユミットＭe262である。
　これは、元来、ジェット戦闘機として設計されたが、ヒトラーは、爆撃機として配備するよう強く主張した。
　そのため、この機の登場は、本来計画されていた一九四四年の初めではなく、その年の末まで遅れてしまった。

HEINKEL He111 H-6ハインケルHe111 H6
●全備重量：12,400kg　全幅：22､59m　全長：16.60m
エンジン：ユンカース｢ユモ｣211F-2、1,340馬力2　
武装：7.9mm MG15機銃6、20mm機関砲1　乗員：6
最高速度：416km/h(高度5,000m)航続距離：2,830km
爆弾搭載量：2,500kgまたは航空魚雷2
　He111は、スペイン内乱で初めて使用され、
第二次世界大戦を通じてドイツ空軍の花形機となった。
このH6型機は、第一級の雷撃機であった。

HEINKEL He111 B-2ハインケルHe111B2
●全備重量：10,000kg　全幅：22.61m全長：17.50m
エンジン：ダイムラー・ベンツ600，950馬力2
武装：7､9mm機銃3　乗員：4
最高速度：300km/h（海面上）実用上昇限度：7,000m
航続距離：1,660km　爆弾搭載量：1,500kg
　He111は、スペイン内乱のコンドル軍団で活躍し、
敵のどんな戦闘機よりも高速で､護衛機もひきつれずに
自由自在に爆撃を行なった。
しかし、この機を過信した結果、1940年に「スピットファイア」
や「ハリケーン」と戦って撃破され、
He111はすぐに、夜間作戦用に変更された。

FOCKE-WULF FW189フォッケウルフFw189
●全備重量：3,950kg　全幅：18.41m　全長：11.99m
エンジン：アルグスAS410A-1、450馬力2
武装：7.9mmMG17機銃2、7.9mmMG15機銃2　乗員：2
最高速度：356km/h（高度2,600m）実用上昇限度：8,400m
航続距離：690km　爆弾搭載量：100kg
軽爆撃・地上攻撃機で、1940年末にドイッ空軍に配備され、
その後、主にソ連攻撃に使用された。

JUNKERS Ju87B2 “STUKA”

ユンカースJu87B2「スツーカ」の操縦室

1.可視式急降下指示器
2．照準器
3．人工水平儀
4．コンパス・リピーター
5．速度計
6．ブースト計
7．高度計
8．回転計
9．フラップ指示器
10.機内通話装置
11.衝点緩衝ハッド
12.手動式エンジンホンプ
13.エンジン燃料注入ポンプ
14.配電盤(無線通信用)
15.滑油冷却器用
　　フラップ･コントロール
16．方向舵ペダル
17．目標視認窓
18．操縦桿

19．目標視認窓
　　フラップ･コントロール
20.燃料流量測定用
　　手動式ポンプ
21.スロットルレバー
22.スタータースイッチ
23.主電源スイッチ
24.冷却液温度計
25.燃料計
26.潤滑油温度計
27.油量計
28.コンパス
29.潤滑油面圧力計
30.時計
31.急降下プリセット指示器
32.燃料圧力計
33.電波高度計
34.昇降計
35.水冷装置用フラップ指示器

2 空の脅威「スツーカ」 top

　戦時下のドイツでは、すでに配備されていた主要な四種の爆撃機の改良と開発に精力を注いでいた。
　初期に最も成功をおさめたものの一つが、Ｊu87「スツーカ」である。
　この機は、電撃作戦と一体の急降下爆撃であげた成果のために、一九三〇年代後半のドイツで人気を博した。
　「スツーカ」は、一九三八年に初めて登場し、大戦開始後の数ヵ月、ドイツ陸軍が、ポーランド、フランス、べルギー、オランダを突破して進軍するのを援護し、期待通りの成果をおさめた。
　「スツーカ」の急降下ブレーキは、爆弾照準を容易にするように、スピードを一定に保つために使用されたが、このブレーキのたてる高い金属音は、混乱した敵軍隊やヨーロッパの民間人に、新たな恐怖をもたらした。
　しかし、ドイツ軍が、イギリスの飛飛行場攻撃にこの「スツーカ」を使用した時は、これより高速の「スピットファイヤー」や「ハリケーン」戦闘機に非常に弱かった。
　そこでＭe109戦闘機による援護を試みたが、成功しなかった。
　急降下の際、Ｍe109は、「スツーカ」のようにスピードを抑えることができず、「スツーカ」を置去りにして、イギリス戦闘機のなすがままにまかせるしかなかった。
　のちに、この機には改良がほどこされ、エンジン出力は二倍、爆弾搭載量は四五〇キロから一八〇〇キロに増加し、乗員のために装甲板が付け加えられた。
Ｊu87の各型は、戦争の終結まで使われ、特に東部戦線で成果を挙げ、またノルマンジー侵攻の最中と後、対戦車地上攻撃機として使われた。
戦時中に、約五〇〇〇機の各種のＪu87が生産されている。

DORNIER Do17V1＝ドルニエDo17V1
●Do17V1の初飛行は1934年で、すんなりと細長い形をしていたため“空飛ぶ鉛筆”というニックネームがつけられた。
この機は、高速営業用飛行機（6人乗りの郵便機はこの機がベースになって開発されたもので、ルフトハンザのため3機生産された）として計画され、2基の660馬力BMWV1液冷エンジンを搭載し乗客と2人の乗員のために、2つの乗員室が設けられていた。

DORNIER Do17V8＝ドルニエDo17V8
●原型の後続シリーズのV4(1935年)は、1枚の垂直安定板と方向舵を1対の垂直安定板と1対の方向舵に取り変えたが、これは後のモデルの特徴となった。Do17の軍用機としての力量は、1937年のチューリッヒにおける軍用機競技会に参加したV8型によって示された。

EINKEL He111 ／V1＝ハインケルHe111/V1
●He111の原型は、1934年末にはにめて現われたが、3挺の7.9mm機関銃を機首と背部と腹部に装備した爆撃機で、2基の660馬力BMW6型液冷エンジンを動力源とし、1,000 kg爆弾を搭載することができた。
後期にはさらに改良されて、営業用輸送機となり、また強力なDB600Aエンジンを装備した軍用機として1936年にはじめて配備された。

HEINKEL He111 E3＝ハインケルHe111E3
●He111のEシリーズは
1937年に生産され、ユンカース「ユモ」211A-3エンジンを動力源とし、その最高速度は430km/hで、実用上昇限度は、7,000mであった。
半引込式ラジエーターを採用、抗力の減少を図った。第二次世界大戦の初めまで、He111は、おそらく当時の中型爆撃機のうちもっとも優れたものであったが、変化していく要求に、その改良がついていけなかった。

JUNKERS Ju88V1＝ユンカースJu88V1
●高速双発中型爆撃機として、1935年ドイツの設計仕様書に従って開発された原型Ju88V1は、2基の900馬力DB600液冷エンジンを動力源とし1936年12月に処女飛行を行なった。

JUNKERS Ju88V4＝ユンカースJu88V4
●V1に続いて、6ヵ月後、Ju88V4が、新たに設計された。4人目の乗員を収容できる操継室を設け、950馬力｢ユモ｣211Aエンジンを使用していた。このJu88V4によって、最初に配備されたいくつかのタイプの原型が決定された。
その原型Ju88A-1は、ちょうどよい時に生産され1939年9月のイギリス攻撃に参加することができた。

JUNKERS Ju88A-1＝ユンカースJu88A-1
●全備重量：12,500kg、全幅：18.26m　全長：14.36m
エンジン：｢ユモ｣211B、1,200馬力2　武装：7､9mm機銃3　乗員：4
最高速度：460km/h(高度5,500m）実用上昇限度：9,350m　
航続距離：2,500km　爆弾搭載量：2,500kg

3 “空飛ぶ鉛筆”Ｄo17 top

　ドルニエＤo17は、その最初の原型機が一九三四年に飛行した。
　もともと高速の六人乗り郵便輸送機として設計されたが、横から見た姿が細長いので、“空飛ぶ鉛筆”というニックネームがつけられた。
　一九三七年、この機は、それまでヨーロッパで生産されていた最も優秀な戦闘機よりも性能が優れており、ドイツ空軍の中型爆撃機として配備された。
　Ｄo17は、スペイン内乱の際、有名なコンドル軍団に配備されるために選ばれた型の一つであり、一九四〇年までに登場した改良型の一つＤo17Ｚは、イギリス爆撃に最もよく使用された。
　この型は、四、五人の乗員が乗りこめるように、前部のガラス張りの部分が広くなり、球根状にふくらんでいた。
　改良が進み、装備が増すにつれて、本来の美しい形は、しだいに失われていった。
　これは多くの軍用機の宿命といえよう。
　Ｄo17Ｚに続いて、Ｄｏ215が登場したが、この型の多くは、夜間戦闘機として使用された。
　この系列の最後の型は、一九四〇年に初めて配備され、ドイツ空軍の最も貴重な爆撃機の一つとなったＤo217で、ヨーロでハでの戦いが終わるまで作戦に使用された。
　Ｄo217は、直列エンジンと星型エンジンの両方によって適宜、動力を供給され、広範な作戦を遂行した。
　たとえば、機上要撃用レーダーを装備した夜間戦闘機、急降下爆撃、機雷敷設、雷撃に使用された。
　Ｅ5型は、ヘンシェルＨs293滑空爆弾の発射、および誘導無線装置を取付けられるように開発された。

4 最も用途の広い爆撃機 top

　一九三九年に配備されたＪu88は、本来、高速中型爆撃機として設計されたが、やがて第二次世界大戦中で最も
用途の広い航空機となり、英空軍の「モスキート」よりもさらに融通性に富んでいた。
　戦争のはじめの数年間、この爆撃機の標準型はＪu88Ａで、最大爆弾搭載量は二五〇〇キロ、急降下爆撃作戦に適した空力ブレーキが取付けられていた。
　しかし、急降下爆撃がこの機の第一目的ではなかった。
　その後、この機には、さまざまな開発がなされたが、それには、装甲用鋼鉄板の補強、翼幅の伸長、出力増加および防御用火器の増強がふくまれている。
　Ｊu88の最後の型であるＪu88Ｓは、昼間作戦で、連合国軍の戦闘機からのがれるため、高度六一〇〇メートルで、時速六〇〇キロという高速に改良された。
　昼間および夜間戦闘機の各型を含むＪu88の生産量は、一五〇〇機にのぼった。
　Ｊu88という有能な基本型からさらに進歩したＪu88は、一九四二年に初めて登場したが、純粋な爆撃機として使用されることは、比較的少なかった。
　さらに開発が続けられて、Ｊu388が生れたが、この型で実用化されたのは、写真偵察用だけであった。

DORNIER Do17K＝ドルニエDo17K
●Do17の中で､最初に注文を受けたものの1つは、ユーゴスラビア政府からの発注で、輸出用のDo17Kであった。
この機は、この初期の型に使用されていたBMWエンジンの代わりに、2基の986馬力ノーム･ローン14N星型エンジンを使用していた。

HEINKEL He111 P-6＝ハインケルHe111 P6
●He111シリーズは、1938年から生産が開始された。P6は、1,200馬力DB601Nエンジンを動力源とし、機首は楕円形をしていて、視野が広くなっていた。
3挺の7.9mm機銃が装備され、最大爆弾搭載量は2,000kgであった。

HEINKEL He111H-6＝ハインケルHe111H6
●HEINKELの中で最も重要な爆撃機は「ユモ」エンジンを搭載したHシリーズ機であった。
H6は､爆撃機と雷撃機の両方に使用され、機体の尾部端に遠隔操作できる7､9mmMG17を装備している機もあった。

HEINKEL He111H-2＝ハインケルHe111H21

HEINKEL He111H-22＝ハインケルHe111H22
●H21とH22は、防御用火器を除いて、基本的には同じ型である。
H21は、He111の最後の爆撃機で、1944年に生産され、2基の1,600馬力「ユモ」213EIエンジンを動力源とし最高速度は475km/hで､実用上昇限度は10,000mであった。
この機の訪御用火器は、機首に一挺の13mm手動式MG131、機体の背部の電気作動旋回機銃座に白蓮のMG13に重装甲された腹部のゴンドラに同種の機銃、そして側面の部分に、各々1対の7､9mmMG81が装備されていた。
夜間爆撃専用に計画されたので、この機は、排気管に大きな消炎装置が取り付けられていた。

　開発の最終段階に生れたＪu488は、終戦の時、まだ製造中であった。
　ハインケルＨe111は、一九三五年に初飛行した時、民間輸送機を偽装したが、うまくいかなかった。
　この機は、スペイン内乱の際、コンドル軍団が使用したドイツ機の一つであった。
　この内乱と一九三九年のポーランド爆撃の時には成功をおさめたが、一九四〇年、イギリスに対する昼間爆撃を行なった時、「スピットファイア」や「ハリケーン」と戦って撃破されたので、夜間攻撃用に任務変更された。
　ほぼ一〇〇〇機のＨe111が生産されていたが、一九四四年末、ドイツで生産が停止されるまでに、五二〇〇機以上のさまざまな型のＨe111が作られた。
　しかし、スペインでは、その後も数年間、生産が続けられた。

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