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6　ソ連の爆撃機

　戦争初期の数ヵ月間、ソ連爆撃隊には、旧式機しか配備されていなかったが、やがて、新型機が生産に移された。

1 戦闘機より速い爆撃機 top

　最も旧式のツポレフＴＢ3は、一九三一年に最初に配備され、数年間は、世界有数の四発爆撃機部隊を形成していた。
　それに続く型の機は、一九三八年の対日攻撃、一九三九年のポーランドおよびフィンランドにおける作戦に参加した。
　一九四一年のドイツのソ連侵略の後、短期間、夜間爆撃機にも使用され、その後、戦争中は輸送機として、引き続き任務についた。
　双発ツポレフＳＢ2は、前者より進んだ型で、一九三四年に初飛行、スペイン内乱では、共和国軍側で活躍した。
　ＳＢ2は、その性能においてほぼ似かよったブリストル「ブレニム」と同様に、余りに速度が遅く、火器も貧弱だったので、昼間作戦行動ができず、ドイツとの戦争の初期段階で、夜間爆撃任務に配転された。
　ＴＢ3以外に、戦争中生産された四発爆撃機は、ペトリヤコフＰe8のみであった。
　これは、爆弾搭載量の大きい、高速長距離爆撃機としてＡ・Ｎ・ツポレフが設計したが、しかし、大量生産するための準備は、Ｖ・Ｍ・ペトリヤコフが担当した。
　Ｐe8の最大速度は、高度七八〇〇メートルから八七〇〇メートルの間では、メッサーシュミットＭe109戦闘機よりも速かった。
　爆弾搭載量二〇○○キロ、航続距離七七〇〇キロ以上で、ドイツの慨深くまでたびたび攻撃を敢行した。
　生産は、一九四四年まで続けられたが、双発爆撃機の性能が満足できるものとわかると、Ｐe8はほとんど生産されなくなった。

2 世界一優秀な地上攻撃機 top

　戦争中大量に生産され、ソ連空軍の主力を形成したのは、航続距離の長いイリューシンＩＬ4とペトリヤコフＰｅ2戦術爆撃機の二機種で、両機とも一九四〇年に配属された。
　ＩＬ4は、一九三〇年代初期の全金属製イリューシンＤＢ3の発展型で、前部胴体が全く設計し直され、操縦者および爆撃照準手の活動を考慮して、機首の部分が長く伸ばされていた。
　ドイツのソ連攻撃によって、ソ連では金属不足が生じ、後期型は大部分木製となったが、性能には、たいした影響を与えなかった。
　ＩＬ4は、長距離爆撃機として知られ、枢軸国との戦争に参加し、ドイツ本土に対する間断ない攻撃に加わった。
　その中には、一九四一年八月のソ連軍による最初のベルリン攻撃がふくまれている。
　ペトリヤコフＰe2は、本来、高速双発戦闘機の設計に基づいて作られたものであるが、爆撃機として使われたものもあった。
　翼の下に降下ブレーキのついた急降下爆撃機として使用されかが、一方、水平爆撃も行なったので、真の爆撃機と考えるべきであろう。
　爆弾は、胴体内中エンジン・ナセルの後部内だけでなく、両翼の下にも搭載することができた。
　Ｐe2ほどではないが、一九四一年以降大量生産されたもう一つの戦術爆撃機は、ツポレフＴu2で、最大速度が戦闘機とほぼ等しく、水平爆撃と急降下爆撃のどちらにも使用できた。
　この機は、戦争後も生産が続けられ、一九五〇年代半ばまで、ソ連空軍、ポーランド空軍、さらに中国空軍に配備され、朝鮮戦争で活躍した。
　エルモラーエフＹer2長距離爆撃機は、イリューシンＩＬ4の後継機として、一九四一年に導入されたが、比較的少数しか生産されなかった。
　この点は、第二次世界大戦で特筆される唯一の他のソ連爆撃機、アルハングリスキーＡr2にもあてはまる。
　この機は、一九四一年のドイツの対ソ侵略の期間のみ使われた。
　しかし、ここでイリューシンＩＬ2「シュトルモビク」地上攻撃機にふれなければならない。
　この機は、このクラスでは最大の、爆弾搭裁量が六〇〇キロにものぼり、一人乗りも二人乗りも製造された。
　その強力な装甲と低空におけるすばらしい操縦性能によって、ソ連の最も優れた兵器の一つとなり、大戦中使用された他のどんな地上攻撃機よりも優秀であった。