あとがき・略年表・参照文献

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　あとがき　　　一九八五年九月　　藤井哲博

　小野友五郎には、初め「津多」、その病死後には「うた」という前後二人の夫人があったが、そのいずれからも実子に恵まれなかった。
　友五郎自身小野家の養子であったから、彼が幕臣に登用されたとき、笠間藩士小野家が絶えないように、長兄の三男「松之助」を養子に迎えて小野家を継がせた。
　この系統が笠間系小野氏であるが、後に富津の青堀町大堀に転籍した。
　一方、友五郎は初め静岡藩士族、後に東京府士族の小野家、つまり東京系小野氏を継続するために長兄の孫「熊次郎」を養子とした。
　その後、全く血のつながらない次男養子「政精」・三男養子「義利」を迎えて二つの別家を設けた。
　しかし長男養子熊次郎は、友五郎とうまくいかなかったらしく、途中で廃嫡され、友五郎がまた戸主に戻っている。
　彼の死後は、遺言により熊次郎の長男の「友七郎」が東京系小野氏を継いだが、友七郎にも実子がなかった。
　しかし熊次郎には友七郎の下に「三五郎」という次男がいた。
　この三五郎は清水の望月氏の養子にやられたが、後に大阪に移り、長男「久良寿」氏と次男「清」氏をもうけた。
　そして、東京系小野氏を絶えさせないために、次男清氏に小野家を継がせた。
　その菩提寺は初め東京・江戸川の「枳殻（からたち）寺」、西光院（成就寺）で、宗旨は天台宗であったが、清氏は昭和四十九年、現在地広島の真宗・法林寺の経営する緑井墓園に小野家の墓を移した。
　しかしそのとき成就寺には、小野友五郎個人の墓はすでになくなっていたという。
　このように、小野氏には二系列があるが、本書で使用させてもらった史料は、二、三の例外を除き、東京系小野家私蔵のものと、公的機関の所蔵史料・公刊資料が中心となっている。
　公刊・公蔵の史・資料と笠間藩関係史料については、それらの所在の発見から解読にいたるまで、ほとんど地元の久野勝弥氏（茨城県教育委員会）の業績を使用させていただいた。
　また永年「肥田浜五郎」を研究しておられる、著者の海軍兵学校時代の恩師、堤健男氏からは、浜五郎と友五郎の業績の関連について幾多のご教示をいただいた。
　友五郎の知識は広範かつ実用的なものが多いが、この一世紀の科学・技術の進歩ははなばなしかったから、彼のそれは今日からみれば非常に古典的で、それを充分理解するには、どうしても専門の科学技術史家のご援助を仰ぐ必要があった。
　特に和算の松崎利雄（小山工専教授）、天文学の故広瀬秀雄（東大名誉教授・元東京天文台長）、航海術の飯田嘉郎（航海・運用術史研究室）、製塩の村上正祥（日本専売公社）の各氏からは、それぞれの専門分野について懇切なご教示をいただいた。
　史・資料の蒐集・調査については、前記諸氏の他に、これまた多くの方々のお世話になった。
　ページ数の都合でその主なる方々のお名前を列記するに留める失礼をお許しいただきたい。
　藤井貞雄ならびに高橋昭夫（北海道新聞社）、石井勉（北海道史研究会）、池田清（東北大学法学部）、故伊藤英雄（笠間史談会）、塙瑞比古（笠間稲荷神社）、中川浩一（茨城大学教育学部）、小林研司ならびに、屋坂登良（日本専売公社）、田中弘之（駒沢大学図書館）、松沢正二（交通博物館）、松島忠（日本国有鉄道）、窪田正志（静岡市立商業高校）、渡辺則文（広島大学総合科学部）、望月久良寿ならびに小野清（東京系小野家）の諸氏。また在米の史・資料については、ジョージ・Ｍ・ブルックニ世（ヴージニア軍事大学）、ディーン・Ｈ・クーパー（米国国務省）、吾妻常雄（駐米日本大使館）、山田勝重（日本航空）の各氏の協力を得た。
　史・資料の調査・複写をお許しいただいた諸機関は、国会図書館、国立公文書館、宮内庁書院部、東京都中央図書館、大阪府立図書館、静岡県立図書館、函館市立図書館、東京大学史料編纂所、東北大学図書館、笠間稲荷神社史料館、海上保安庁水路部、日本国有鉄道、交通博物館、特許庁資料館、日本専売公社などである。米国では、ヴァージニア軍事大学（ＶＭＩ）、ヴァージニア州立大学、国立公文書館、ワシントン海軍博物館、米国海軍兵学校等でお世話になった。
　また明治維新前後は、写真の世界ではタブロイド式から乾式への過渡期に当っていた。
　この時期の珍しい写真も数多く日米両国で集めることができ、本書にその一部を掲載した（人物被写体の着衣の襟が左前になっているものは原板がタブロイド版と見てよい）。
　それら写真の処理には真下一男氏を煩わした。以上付記して厚く感謝の意を表する。

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