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13 世界各国で愛用された戦闘機

　フランスがインドシナ〔ベトナム〕を日本から奪還した時、「スピットファイア」9型の二個中隊が、フランス空軍で活躍した。
　また英空軍の第百五十五中隊の「スピットファイア」8型が、戦後の紛争期間中、過激派を打倒するためにインドネシアに派遣された。
　一九四七年、マレーにおいて、共産主義暴徒の暴動か起った時にも、「スピットファイア」が活動した。
　南アフリカの一個中隊は、「ムスタング」に乗って朝鮮にいく前に、「スピットファイア」9型で飛行訓練をうけた。
　一九四八年の中東におけるイスラエル・エジプト戦争では、両方とも「スピットファイア」をもち、また中立の英国の「スピットファイア」も、エジプトの飛行場を基地にしていたため、しばしば混乱が起った。
　エジプトの「スピットファイア」がイスラエルの「スピットファイア」と対抗したため、あるとき純然たる偵察任務についていた英空軍の18型四機のうち一機はイスラエルの対空砲火により、三機はイスラエルの「スピットファイア」によって撃墜された。
　この時英国のパイロットたちはパラシュートで飛び降りだ。
　その後、イスラエルは、「スピットファイア」をビルマに売りわたした。
　「スピットファイア」を使って英空軍が行った最後の作戦行動は、第六十中隊の18型がやったジョホール地域〔シンガポール対岸〕のマレーのテロリストの隠れ家にたいする攻撃であった。

1 「スピットファイア」献納運動 top

　戦争中「スピットファイア」基金というものがあったが、その目的は、単に戦争遂行のため、一般国民の寄付によって資金を集め「スピットファイア」を購入するというものであった。
　一九四〇年に「スピットファイア」の公表価格は一機五〇〇〇ポンドであったが、実際は、これより少し高かった。
　戦争末期には、21型の価格は1型の少なくも二倍であったであろう。
　これら一般の寄付と個人の寄付によって数百機が購入され、寄付によった飛行機には、寄付した個人の名がエンジンカバーの側面または操縦席の下にペンキで書きこまれた。
　米国陸軍航空軍が譲りうけ、または貸与されて飛んだ「スピットファイア」は、のべ二万八九八一回出撃し、敵機二五六機を撃墜し、爆弾二〇二トンを投下した。米国が戦闘で失った「スピットファイア」は一九一機であった。
　また一三〇〇機以上の「スピットファイア」がソ連に船で送られ、地上軍の直接協力に使われた。
　ソ連軍で使った9型のある一機は、一九四四年秋の戦闘中に、ドイツ空軍のメッサーシュミット四機を撃墜したとの報告があった。
　戦争が切迫し「スピットファイア」の輸出許可が停止される前に、1型三機をトルコに輸出した。
　トルコがドイツに敵対して英国を支援することになってから、各種の「スピットファイア」が相当数、供与された。
　それ以前には、ドイツが、トルコにＦｗ190を供与していた。

2 標識と機体塗装 top

　「スピットファイア」の1型と2型は、上面はトビ色と緑色の迷彩、また下面は薄灰色と緑色または空色で塗装してあった。
　型の中には上面を濃緑色と灰色にしたものもあった。
　ＨＦ〔高々度用〕「スピットファイア」は、戦闘機の標準の迷彩がペンキでほどこしてあった。
　中東ではＨＦ7型は胴体に薄い空色の地に、赤と濃紺の円形国籍マークを入れ、それをはさんで黒色で中隊番号と製造番号が書き入れてあった。


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　国籍マークの前のはじめの二字は、中隊符号を示し、マークの反対側の二字は、中隊内の各機の符号を示すものであった。
　大隊長や上級者の中には、中隊番号のかわりに、自分の名前の頭文字をいれるものもあった。
　クライブ・コールドウェルの5型Ｃは、エンジンカバーの周囲に、つやけしの黒色の筋を書き、垂直尾翼を空色と白色に塗り、円形標式のほかは、金属の自然色に仕上げて、ＣＲ−Ｃという文字を書きこんであった。
　英国の飛行機は全部胴体後部に機の型式番号が入れてあった。
　「スピットファイア」の型式番号は、試作機の五〇五回からはじまり、最後のものは「シーファイア」ＶＲ九七二であった。
　もし飛行機が空軍の整備指令によって飛行禁止となり、または他国に移されたりした時は番号は変更された。
　正規の国籍マークは、赤色の円形に幅の狭い白の円と幅の広い濃紺の円で、外周は幅の狭い黄色の円で、マークが迷彩の塗色から浮きあがっで見えるようにしてあった。
　他の国籍マーク、特に全翼上面のものは、単に赤と濃紺とのものにしてあった。
　「スピットファイア」の国籍マークは大部分は胴体両側と主翼上面と下面につけてあった。
　垂直安定板のマークは、普通赤と濃紺でタテに塗り分けた矩形で、中央に白線が入れてあった。

3 各国で記念展示 top

　5型Ｃの変型の一つに、パイロットの座席の前に、もう一つ座席のあるものがあった。
　この飛行機はシチリア島の第二百六十一中隊から連絡飛行をしていた。
　一九五一年、アイルランド航空軍団用に、複座の9型練習機を造ったが、他の複座機は8型から改造された。
　一九四三年にポルトガルが、ナチ派のスペイン人の侵入を恐れていた時、英国はポルトガルの航空部隊へ5型五〇機を船で送った。
　戦争が終った時、ギリシャに残っていた5型Ｃはギリシャに引き渡されたが、ギリシャはさらに9型七七機を購入した。
　中東の作戦後、フランスの第一駆逐連隊がもっていた「スピットファイア」にくわえて、フランス空軍はさらに5型Ｂ七〇機を購入した。
　一九四二年、7型が一機、ニューヨークに送られた。
　米陸軍航空軍は8型七機を受取り、ＰＲ19型一機がオハイオ州デイトンのライト・パターソン基地に展示された。
　なおこれ以外に記念展示用として造られた「スピットファイア」が、シカゴ、コロラド・スプリングスおよびハリウッドのペルリ空港にある。
　戦後「スピットファイア」を軍用に使った他の国々は、オランダ、イタリア、チェコスロバキア、デンマーク、ノルウェー、ローデシア、シリアおよびわずか一機のアルジェリアである。
　大戦中、ドイツ軍は1型、5型Ｂ、9型および8型各一機を捕獲して、試験飛行をした。
　試験の結果は、ドイツ製エンジンを装備した「スピットファイア」は、操縦性がずっとよく、上昇力も早く、上昇限度は速力が少し早いＭｅ109Ｇよりも高いことがわかった。
　記念用として残された「スピットファイア」は、英国空軍の多くの基地にある。
　これらの基地の中には、ビギンヒル、ホーンチャーチ、タングメア、ホーキンジ、マンストン、ケンリー、ターンハウスおよびチャーチ・フェントンなどの有名な「英本土航空決戦」の飛行場が含まれている。
　「スピットファイア」はまた、世界中の飛行場や博物館にもある。
　ロンドンの王立戦争博物館、キャンベラの戦争博物館、その他オタワ、アテネ、ラングーン、パリ、シンガポール、オークランド〔ニュージーランド〕、ヨハネスバーグ〔南アフリカ〕、ブリュッセル、アイントホーベン〔オランダ〕、コペンハーゲンおよびタイのトラドの児童遊園地にもある。

4 “理想的な機械” top

　欧州戦争中の大部分を英空軍に入って「スピットファイア」で飛んだフランスのパイロット、ピエール・クロスター・マンは、その体験を『ビッグ・ショー』に書いているが、「スピットファイア」の個性について、次のようにのべている。

　「スピットファイア」は英国式の典型的なものである。
　調和がとれており、戦闘機として必要な、すべての性能を完全に総合し、防御には理想的のものである。
　また冷静、正確な頭脳によって考えだされ、良心的に造られ、本質的に理想的な機械である。
　「スピットファイア」は、これで飛んだパイロットに、ほかの飛行機に乗換ると、慣れるのが、極めてむずかしいという印象をあたえた。

5 主なスピットファイルの形式図

ビッカース・スーパーマリン「スピットファイア」5型B 1942年5月、第71“鷲”「中隊の所属機　発動機：ロールス・ロイス「マーリン」45、45M、46、50、50A、50M、または56､1,470馬力〜1,585馬力 武装:20ミリ機関砲2（弾薬各120発）、7.7ミリ機関銃4（弾薬各350発）、225キロ爆弾1または110キロ爆弾2 最高時速:600キロ（高度6,000m）上昇速度：毎分1,450m（海面高度）上昇限度:10,800メートル　航続距離:760キロ〜1,600km 自重:2,300kg　全備重量:3,080kg　全幅:11.23m　全長:9.12m	ピッカース・スーパーマリンＬＦ９型Ｅ（低高度用） 1946年4月、第129中隊の所属機 発動機：ロールス・ロイス「マーリン」66、1,720馬力 武装:20ミリ機関砲2（弾薬各120発）、12.ミリ機関銃2（弾薬各250発）、225キロ爆弾1または110キロ爆弾2 最高時速：656,5km/h（高度7,500m）上昇速度：毎分1,250m（海面高度）実用上昇限度:13,000メートル　航続距離：標準700キロ、最大1,580km　自重:2,630kg　全備重量:3,400kg　全幅:9.81m　全長:9.46m
ピッカース・スーパーマリン「スピットファイア」ＦＲ（戦闘偵察）14型E 1946年、英国インド空軍第6中隊所属機 発動機：ロールス・ロイス「グリフォン」65または66、2,035馬力 武装:20ミリ機関砲2（弾薬各120発）、12.7ミリ機関銃2（弾丸各25D発）、225キロ爆弾１または110キロ爆弾2  最高時速:720.4キロ（高度8,000m）上昇速度：毎分1,400m（海面高度） 実用上昇限度:13,560m　航続距離：標準740km、最大1,370km 自重:2,953kg　全備重量:3,900kg　全幅:11.23m　全長:10.00m