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3　ヨーロッパの空に敵影なし

　一九三九年〔昭和十四年〕九月一日早朝、ドイツ軍地上部隊がポーランドヘなだれこんだ瞬間、第二次世界大戦の幕がきっておとされた。
　朝のうちは霧がたちこめて、大規模な航空作戦はできなかったが、午後になるとはれあがり、ドイツ空軍はすさまじい攻撃を開始した。
　ドイツ空軍は、この戦闘に一六〇〇機ちかい第一線軍用機を集結し、その大部分で第一および第四航空軍を編成していた。
　ドイツ空軍の第一の目標は、ポーランド軍航空基地の攻撃であった。
　水平爆撃機と急降下爆撃機にくわえて戦闘機が、たえまなく猛烈な機銃掃射をあびせた。
　どうにか離陸してはみたが、ポーランド軍のパイロットたちは、時代遅れのPZL戦闘機が、ドイツ空軍の新鋭、メッサーシュミット戦闘機の敵でないことを、思い知らされた。

1 ポーランドで空陸協同作戦

　戦端がひらかれたとき、一五九機の戦闘機と一五四機の爆撃機をふくむ、わずか三九七機の第一線兵力しかもだないポーランド空軍は、ほとんどなすすべもなかった。二日とたたぬうちに、ドイツ空軍は、ポーランド上空のほぼ完全な制空権を確立した。こうして第一の責任をはたしたドイツ空軍は、はやくも第二の任務――地上軍の進撃支援――に転ずることになった。
　ポーランド軍の動静は、すべてドイツ軍の空中偵察で明らかになり、地上軍は空からの組織だった攻撃にさらされ、後方地域の道路や鉄道は、くりかえし猛攻撃をうけた。このため、ポーランド軍の移動は、ときにはほとんど不可能になった。
　一方急降下爆撃機は、退却するポーランド軍にたえまない攻撃をくわえて、ドイツ地上部隊の進撃をおおいにたすけ、強固な陣地、砲兵陣列、軍の集結地などを壊滅していった。
　ポーランドのポズナュ軍司令官クツルツェーバ将軍は、ドイツ空軍の猛攻について、つぎのように泣きごとをいっている。
　「あらゆる瞬間に、あらゆる軍団とあらゆる進路は、空からの殲滅〔せんめつ〕的な火力にとらえられていた。
　まさに地上に現出した地獄であった。
　橋梁は破壊され、渡河点は遮断され、高射砲やそのほかの砲兵力は殲滅させられた……対空防御態勢は完全に失われてしまい、戦いの継続とは、ただ、じっとしている以外の何物でもなかった。
　しかも、その場にとどまることも、やがては、そこもドイツ空軍によって墓場にかえられてしまうという、さしせまった恐怖におののいていた」
　九月十七日までには、ポーランド陸軍はもはや組織だった戦力として行動できなくなり、ドイツ軍にとって、戦闘の終結は目前にせまった。首都ワルシャワの陥落も、まぢかと思われた。
　そこで、西部で英仏両軍と対峙〔たいじ〕している手うすな兵力を支援するため、ポーランド侵攻のドイツ軍部隊は撤退をはじめた。

　ポーランド上空で、ユンカースJu87急降下爆撃機は水ぎわだった成功かしめしたが、ドイツの宣伝機関は、この成功を、えたりとばかりに利用した。
　空軍、地上軍のいずれからもほとんど反撃をうけることなく、パイロットたちは、急降下爆撃の精度を最高に発揮できた。
　この独特の戦闘形式は、心がまえが全くできていなかったポーランド地上軍兵士の士気を阻喪〔そそう〕させた。
　スペイン内乱でうまれた「スツーカ」の伝説は、驚異的な戦果をえて、その優秀さを再確認されたのである。

3 デンマークとノルウェーを占領 top 　ポーランド戦での輝かしい勝利ののち、ドイツ空軍戦闘部隊は、国内の後方基地へ、休養と修理のために帰還した。 　ドイツ軍と英仏連合軍にとって、これはしずかな待機の時期であり、また一九四〇年に予想される戦争への準備期間でもあった。 　この時期は、よく“フォニー・ウォア”〔まやかしの戦争＝ドイツでは“ジッツクリーク”（すわりこみ戦争）とよばれた〕といわれている。 　両地上軍が、しずかな西部前線〔ドイツ軍はジークフリート線、連合軍はマジノ線〕にそって対峙しているあいだ、戦争指導部のメンバーたちは、無為にすごしてはいなかった。 　ドイツ軍にとって新年の主要な仕事は、オランダ、ベルギー、フランスヘの、組織だった大攻勢をくわえる計画をたてることであり、それは春の終りに開始することになっていた。 　しかし、ヒトラーは、デンマークとノルウェーをまず占領すべきだと主張した。 　これは、ドイツの北方側面を安全にするためと、スカンジナビアおよびバルト海にたいする英軍の行動の先手をとるためであった。 　一九四〇年四月九日、ドイツ軍は、前ぶれもなく、中立国のデンマークとノルウェーに進撃した。 　ドイツ機甲部隊がデンマークヘほとんど抵抗をうけることなく進撃をつづけ、一方ドイツ海軍がデンマークの諸島およびノルウェーのオスロ、クリスチャンスン、ベルゲン、トロンヘイム、ナルビクヘ兵員を揚陸させているあいだに、ドイツ軍パラシュート部隊は、デンマークのオールボルグの二つの飛行場にはじめての奇襲降下を敢行した。

　まもなくオールボルグの町と、コペンハーゲンの大部分は、ドイツ軍の手におちた。その日の暮れるまえ、デンマーク国土と政府は、これ以上侵略者に抵抗しても、無益の損失をまねくばかりだとみて、戦火をおさめるように命令した。

4 空輸部隊と落下傘部隊活躍 top

　ノルウェーの主要港湾への上陸は、ノルウェー空軍が使用していた飛行場への空襲と同時に始った。この国の微力な空軍は、ほとんど地上で殲滅されてしまった。
　これにつづいてスタバングルのソーラ飛行場とオスロのフォルネブ飛行場は、空輸部隊に占拠され、ドイツ軍地上部隊を支援する急降下爆撃機と双発戦闘機の前進基地になった。
　ノルウェー侵攻にあたって、ドイツ軍は、陸上部隊と空軍の地上勤務員を空輸するため、輸送機を十分に活用した。この作戦には、約五〇〇機のJu52がつかわれたが、その三分の一は正規の輸送部隊からなり、残りは上級飛行学校から借りて編成されたものである。このような輸送作戦は、戦力を増強するのに役だち、南部ノルウェーのドイツ占領地区の拠点の確立に、重要な役割りを演じたのである。
四月十五、十六、十七日、ノルウェーのナルビク、ナムソ、アンナルスネに最初の英仏軍が上陸したときは、ドイツ軍はすでに南部に堅固な足場を確保していた。
　ドイツ空軍は、連合軍の上陸地点や補給物資および増援部隊を運ぶ輸送船団に、激しくおそいかかった。水平爆撃機、急降下爆撃機は、たえず強襲をくわえたが、連合軍空軍の抵抗がまるでなかったので、大損害をあたえることができた。

　地上では、ドイツ軍は、細長いノルウェーを北方にむけ進撃したので、五月のはじめに、連合軍はこの国の中央部のアンナルスネおよびナムソから、撤退をよぎなくされた。六月十日には、北方のナルビクの残存兵力も引きあげてしまった。ドイツ軍は、ノルウェー全土を手中にかさめたのである。
　ドイツ空軍は、ノルウェー作戦の成功に、終始、重要な役割りを果していた。すでにのべたように、オスロとスタバングルの飛行場の占拠は、パラシュート部隊と空輸部隊をつかうことによってできたのである。また、これらが確保されるや、そこから発進する爆撃機や長距離戦闘機は、英仏軍がノルウェーに移動するのを、決定的に遅らせることができた。
　のちに地上戦が展開されたとき、ドイツ空軍が制空権をにぎっていたため、ドイツ軍は、ときには決定的ともいえる優位をしめることになった。それというのも、ノルウェーの内陸交通は貧弱で、わずか一本の道路と鉄道が、高くそびえる二つの山脈のあいだの谷間をぬって、走るだけであったからである。
　だが、ノルウェー戦が終る二ヵ月以上もまえから、ドイツ軍は、フランス本国の奥ふかくへと、強力な侵攻計画をねっていた。

5 フランス侵攻計画 top

　一九四〇年〔昭和十五年〕に予定されたフランス侵攻計画には、危険が予測された。
　そこでドイツ陸軍は、ポーランド戦で成功した小さな挟撃作戦にかわって、こんどはフランスを防衛する連合軍の北方軍と南方軍とのあいだに、強力な機甲部隊のクサビを三〇〇キロ以上にわたって打ちこむことにした。もしこのクサビが、イギリス海峡の海岸に到達し、南北二軍が分断されれば、ひとつずつカタずけることができると考えた。
　しかし、ドイツ軍の作戦計画には危険が予想された。それは、この計画の中核となる機甲部隊の活躍いかんに、すべてが賭けられていたからである。
　もし、ドイツ機甲部隊が、支援の歩兵部隊や補給部隊から孤立したとき、ドイツ軍は苦境におちいる。
　いまや、ドイツ空軍爆撃機は、その威力を発揮する絶好のチャンスをつかもうとしていた。もし地上部隊の前進途上にある障害物の頭上に、強力で集中的な支援――たとえば、砲兵の弾幕のようなもの――ができれば、この賭けは、成功するみこみがあった。

6 ベルギー軍のエバン・エマール要塞 top

　しかしフランスヘの進撃を開始するまえに、ノルウェーやデンマークのときと同じように、ドイツ軍は、それまで中立国であった二つの国（オランダとベルギー）に侵入して、北方側面を固める必要があると考えた。
　行動の速度こそ死命を制するものなので、英仏軍の援軍がくるまえに、オランダとベルギーの主要防衛線を突破しなければならない。
　そこでドイツ軍は、ふたたび空輸部隊を動員して（ただしノルウェー、デンマークのときより、はるかに大規模に）重要な橋梁を、防衛軍に破壊されるまえに、占拠する計画をたてた。
　ドイツ軍にとって、出撃まえに解決しておかなければならない問題が、もう一つあった。それはベルギーのエバン・エマール要塞を占領するか、無力化することである。

7 グライダー部隊が奇襲 top

　一方、ドイツ軍の兵員輸送機とグライダーは、夜暗に乗じて降下し、地上の各所で小規模ながらすさまじい戦闘を行い、降下部隊は、支援の機甲部隊が到着するまで、降下地点を死守した。
　またハーグ〔オランダ〕の三つのおもな飛行場をはやくも占拠し、ロッテルダム〔オランダの港湾都市〕にちかい重要なメルジーク橋も手にいれてしまった。
　エバン・エマール要塞奪取作戦は輝かしい成功をおさめた。
　一一機のグライダーに分乗した八五人の奇襲隊は、夜あけ直前に作戦を開始した。
　二機のグライダーは途中で曳航機から離れてしまったが、残りの九機は要塞の内側に着陸した。
　奇襲の本領をいかんなく発揮して、彼らは、すばやく行動にうつった。
　特製の爆薬をもち、注意ぶかい指示をうけていた奇襲隊員たちは、この鉄壁の砲台を料理する任務にとりかかった。
　砲塔が頑丈すぎて取り除きにくいときは、砲身に一キロの爆薬をしかけて破壊した。
　砲塔の大部分は地下にもぐっていたので、七五〇人にのぼるベルギー守備隊は、ドイツ奇襲隊の破壊作業をほとんど食い止めることができなかった。
　やがて、ドイツ地上軍が到着したので、うろたえた守備隊は降伏してしまった。ドイツ軍の損失は戦死六人、負傷者一五人で、一方一〇倍の兵員をかかえていたベルギー守備隊は、戦死者二三人と負傷者五九人をだした。
空挺部隊が、これほど奇襲の効果をいかんなく発揮したことは前例がなかった。
　前途によこたわっていた重大な障害が一掃されたので、ドイツ機甲部隊は、オランダ、ベルギーの奥ふかく突入した。　上空では、ドイツ空軍機が、実質的には確保したも同然の制空権を最大限に活用して、防衛軍に息つくひまもあたえなかった。
　五月十五日、ロッテルダムが激しい空襲をうけたあと、オランダ政府はついに降伏した。
　この空襲で、九〇〇人の市民が死に、ロッテルダム中央部の大部分が火災で壊滅した。
　ベルギーもまた、非常な苦境にたたされた。
　しかし、ドイツ軍は、主攻撃をフランスヘむけて開始したので、戦闘の重点は、すでに南にうつっていた。

8 フランスの戦い top 　五月十三日の午後四時きっかりに、ユンカースJu87急降下爆撃機の第一波は、ミューズ川西岸上空に殺到し、フランス軍陣地の“弱体化”にとりかかった。 　この未完成の防衛陣地には“Ｂ級兵士”といわれる年長の予備役からなるフランス第十軍団が配備されていた。 ところがフランス軍紀司令部は、このセダン地区を“安全地区”とみなしていたのである。しかし、急降下爆撃機からうなりをあげて落下する爆弾は、地上軍の士気を粉砕してしまった。 　フランスの一将軍は、のちにこうのべている。   「砲兵たちは砲撃をやめて地に伏した。歩兵たちは爆弾の炸裂音と急降下爆撃機のキーンという音にぼうぜん自失して、塹壕〔ざんどう〕の中でちぢみあがってしまった。彼らは、高射砲に走りよって、ただちに砲撃を開始することができなかった。頭をできるだけ下げていることだけを考えていた」 　フランス軍の砲陣は粉砕され、歩兵は壕の中でぼうぜんとしていたから、ハインツ・グーデリアン将軍指揮下のドイツ第一機甲師団は、ごくわずかな死傷者をだしただけで、ミューズ川の西岸に橋頭堡を確保することができた。工兵がすばやく仮橋をくみたてたので、最初の戦車群は、轟音をあげてミューズ川をわたった。日没までにグーデリアンの機甲師団は、第一および第二の防衛陣地を突破して、マルフェ高地を奪取した。 　十四日になると、セダン付近でミューズ川にかけたドイツ軍の仮橋は、フランス侵攻の重要なカギになった。このことは、連合軍もドイツ軍もともに認めた。

　この日、イギリス空軍の前進攻撃部隊〔前進基地をフランス国内においた〕は「いかなる犠牲をはらっても、仮橋を破壊せよ」との命令をうけて、すべての使用しうる軽・中型爆撃機を総動員した。フランス空軍も同様の戦力でこれに参加した。
　ふりむけられる戦闘機は、すべてこの攻撃の護衛に動員された。
　しかし、これを迎え撃つドイツ軍戦闘機や高射砲の防御はきわめて堅固で、すさまじい空中戦を演じたあげく、フランス軍爆撃隊はほとんど全滅し、イギリス軍も参加した七一機の爆撃機のうち四〇機を失った。しかも仮橋はそのまま残ったのである。
　連合軍の空陸における反撃の失敗は“フランスの戦い”の決定的な転機をもたらすことになった。
　 ミューズ川を渡河した戦車群をもって、ドイツ機甲部隊は、さらにイギリス海峡にむかって突進した。
　英仏軍には、これを阻止する力はなかった。
　ドイツ空軍は、連合軍の飛行場を制圧する一方、急降下爆撃機で戦車のための進路を切り開いていた。
　機甲部隊の前進をはばんでいる連合軍防衛地点を、空と地上から偵察するやいなや、空軍はただちに攻撃をくわえた。
　急降下爆撃機による一日九回にもおよぶ攻撃で、ドイツ軍の迎撃を食い止めようとする連合軍の企図は、粉砕されてしまった。
　五月十八日までに、ドイツ軍機甲部隊の先鋒は、ソンム川上流に達し、二日後には九〇キロ以上を突進して、海岸に達した。大胆不敵なドイツ軍の作戦計画は成功し、連合軍の北方軍と南方軍は分断されてしまった。
　それは“フランスの戦い”が終る第一歩であった。
　ドイツ機甲部隊の迎撃速攻があまりにも早すぎたために、航続距雛の短い空軍部隊にとって、とくに補給の点で困難な事態がおきてきた。
　単発戦闘機や急降下爆撃機や偵察機の部隊は、ほとんど毎日のように基地を移勤しなければならなかった。
　物資の大部分は道路上を輸送されたが、輸送部隊にぞくするユンカースJu52輸送機は、緊急を要する物資の空輸に利用された。
　海峡の海岸に到着すると、ドイツ機甲部隊は、連合軍を包囲するように北へ迂回した。
　五月二十四日までには、先頭部隊はアラスを通過し、プーローニュを奪取し、カレーに達した。
　そのころベルギーを通過して西進中のドイツ地上部隊は、いくぶんゆっくりではあったが、前進を続けていた。
　フランス北部に取残された英仏連合軍の陣地は、急速に抵抗力を失い、二十六日夕刻には、はやくも第一陣がダンケルク港から撤退してしまった。

　ゲーリングは、ちぢまっていく連合軍の防衛地域と沖合いの船団にたいして、約五〇〇機の戦闘機と三〇〇機の爆撃機で集中攻撃をくわえた。
　この攻撃力は、数字のうえではきわめて強大ではあったが、しかし、これらの爆撃横隊や戦闘機隊は、いずれも二週間にわたる激烈な戦闘をへて、引続き行動していたので、機の損傷と兵員の疲れがひどく、いまでは全力をだして戦闘にあたれるものは、ほとんどいなかった。
　そのうえ、ダンケルクにちかづくドイツ空軍の編隊は、南部イングランドの基地から発進する英軍戦闘機の攻撃にさらされ、戦闘機の緊密な援護のない爆撃機や、とくに急降下爆撃機は、手痛い損害をうけた。
　いまやドイツ空軍は、自分たちと同じレベルの技量と士気をもち、性能でも武装でも同じように近代化された英空軍と、はじめて戦闘を交えることになったのである。
　ドイツ軍の空からの攻撃は、連合軍に多大の損害をあたえ、英本土への撤退に使用された船舶を多数撃沈した。
　しかし、ドイツ空軍は、ついに、連合軍のダンケルク撤退を阻止しえなかった。
　このため、六月四日朝、最後の輸送船がダンケルク海岸をはなれたとき、全部で三三万八二二六人もの連合軍将兵が、英本土に無事撤退することになってしまったのである。
　ダンケルクでの戦闘が一段落したあと、ドイツ空軍は、パリにむけて進撃をはじめた地上軍の支援任務にとりかかった。
　六月十四日、パリは陥落し、それから一一日後、フランス政府は、ドイツに和平を申しいれた。西部作戦はドイツの圧勝に終り、戦争は約一ヵ月半の小休止にはいった。
　いまや、イギリスだけがドイツのまえに立ちはだかっていた。無敵のドイツ軍が、ひとたび攻撃のホコさきをむけたならば、この国もすぐに征服されるであろうということを、だれ一人疑わなかった。