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9 新鋭機、続々デビュー

　ドイツの設計者は、ソピーズ三葉機に対する返答として各種の設計を試みたが、生産に値する機種は、フォッカーＤｒ型三葉機だけであった。
　この機は四人のすぐれたエース、リヒトホーフェン（八〇機撃墜）、エルンスト・ウーデット（六二機）、エーリッヒ・リューベンハート（五三機）およびベルナ・フォス（四八機）を含めたドイツ軍の最優秀パイロットの手により有名となったが、一九一八年五月退役し、戦争中ドイツの最優秀戦闘機となったフォッカーＤ7型機にとって換えられた。

1 ドイツの誇るフォッカーＤ7、Ｄ8 

　フォッカーＤ7型機は、特に高速ではなかったが、高々度における運動性にすぐれ、飛びやすい飛行機であった。
　Ｄ7型機は、一六〇馬力メルセデス・エンジンを搭載し、単座戦闘機の競争では完全に勝ったが、特に注目すべきことは、補強材を必要としない片待式翼であったことである。
　実際には、パイロットの不安を除くため、Ｎ型支柱を設けてはいたが。
　この機は大量発注を受け、フォッカー機と同様にアルバトロス工場で生産され、一九一八年秋までに大多数の駆逐戦闘飛行中隊に装備された。
　フォッカーＤ8「パラソル」型単葉機も注目された機で、イギリス軍から「空飛ぶ剃刀の刃」と呼ばれた。
　一四〇馬力オブラーセル・ロータリ・エンジンを搭載し、ドイツの戦闘機競争に再び勝ったこの機は、もし戦争が一九一八年から一九一九年の冬まで続いていたならば、Ｄ7型と交代していたであろう。

2 数々の新型機 top

5 フランスのスパッド改良型、Ｓ13 top 　フランスにおける開発は、もっぱら現用戦闘機改良にしぼられていた。 　スパッドＳ13は、スパッドＳ7の大型化とエンジン馬力の増大化を図ったもので、二〇〇〜二三五馬力イスパノスイザ・エンジンを搭載し、速度は時速二〇八キロであった。 　スパッドＳ13は、一九一七年夏から秋の間に、Ｓ7と交代し、フランスの標準型単座戦闘機となった。 　Ｓ13は二連装同調機関銃を搭載した最初の戦闘機であり、改造型には、飛行中片手で弾丸の装填ができるように改造した口径三七ミリ機関砲を、プロペラ軸の穴を通して射撃できるようエンジンのシリンダーブロックの間に搭載したＳ12型機があった。 　Ｓ12は、別に軍装ビッカース機関銃を搭載し、これによりパイロットは、発射弾の照準線を前もって定めることが可能となった。 　大きな振動があり、また単発射撃には高度な射撃技術を必要としたため、そう広く使用されなかったが、フォンクやガイネマーは、この砲を用いて多数の敵機を撃墜した。 　Ｓ13型機は約八五〇〇機製造され、アメリカはこれを購入し、戦争終結までにアメリカ遠征軍の追撃飛行中隊一六個隊に装備した。

　イタリアもこの機種を一個飛行中隊に装備した。
　その後の型にＳ17型機がある。この機は、一九一八年秋に生産され、三〇〇馬力イスパノ・エンジンを搭載し、「ストーク」飛行大隊によって飛行した。

　短い小型の胴体に搭載した一一〇馬カルローン、一五〇馬力ＢＲ1、一三〇馬力クレーゲまたは一〇〇馬力ノーム等の大型ロータリ・エンジンのトルク効果のため、最良の運動性が生じ、熟練パイロットの操縦によって、当時の他の機よりすぐれた性能を発揮した。
　この機は、その出現から戦争終結までの間、敵機一二九四機を撃墜し、他のいかなる単座戦闘機より多くの勝利を獲得した。
　しかし、初心者にとっては操縦はむずかしく、適宜修正しなければ急旋回時スピンを起こしやすく、「キャメル」を使用して訓練するパイロットの死傷率は非常に高かった。

8 夜間戦闘の開始 top

　標準型「キャメル」はＦ1Ａで、多数の機が夜間飛行に使用されたが、射撃時の閃光によって、パイロットが一時的に盲目になることが発見された時、特別に改造された。
　すなわちパイロットはぐっと後方に座り、同調機銃の代わりに、フォスター銃架に装着したルイス機銃を、上翼の中央部上方に搭載したのである。再装填の際には、引っぱって下げることができた。
　夜間飛行が開始されたのは、イギリス本土に対する昼間空襲が、対空火砲やＳＥ5およびソピーズ「パップ」戦闘機に妨げられて失敗したので、ドイツ空軍が爆撃を夜間に切り換えた一九一七年末であった。
　「キャメル」は初めての夜間単座戦闘機で、そのうちの二機は、一九一八年一月末、飛行機間の夜間戦闘で「ゴータ」爆撃機を撃墜するという最初の勝利を獲得した。
　戦闘機使用法の多様化にともなって、翼幅を短くし、後部胴体を分離可能とした「キャメル」改造型2Ｆ1が、船上から発進させるため特別に設計された。
　この技術は大戦前アメリカで実験されたが、イギリス海軍が広範囲に発展させた。
　「キャメル」は合計五四九〇機生産され、イギリス戦闘機随一の生産機数となった。

11 最高速機「ナイトホーク」 top

　他にすぐれた単座戦闘機としては、マーチンサイド・バザードがあった。
　二七五馬力「ファルコン」エンジン搭載のＦ3および三〇〇馬力イスパノスノザ搭載のＦ4は、一九一八年末、限定装備され、長距離護衛戦闘機として使用された。
　この機は「スナイプ」より高速であったが、「スナイプ」が戦後の標準型イギリス戦闘機として採用されたため、イギリス空軍においてその地位を失い、マーチンサイド工場は閉鎖された。
　大戦終結前生産された最高速の戦闘機は、Ｈ・Ｐ・フォーランド設計で、新しい三二〇馬力ＡＢＣ「ドラゴンフライ」ラジアル・エンジンを搭載した、イギリスのニューポール「ナイトホーク」であった。
　その最高速度は、地上レベルで時速二四二キロあり、大きな運動性を有していた。
　しかし、期待されたエンジンの信頼性が意外に低く、一〇〇〇機の発注計画が取り消される前、少数機が生産されただけで、実用に供されないうちに大戦は終結した。

12 戦闘機製造に立ち遅れたアメリカ top

　アメリカは、一九一七年四月に大戦に参加したが、かつて航空機のパイオニアであったこの国は、軍事航空において、いまやヨーロッパに大きく引き離されていた。
　アメリカ陸軍航空部隊が軍用にしている五〇機余りの飛行機は、空中戦には適していなかった。
　アメリカは練習機の製造に主力を注ぎ、実用機は連合国から購入しようと決定し、主としてフランスから四八八一機、イギリスから二五八機、イタリアから一九機購入した。
　航空部隊を拡充するための計画が始まったが、初めの提案は余りにも大きすぎた。
　実際は、戦争終結までにわずか四五個のアメリカ戦闘飛行中隊が作戦に参加したにとどまり、戦闘機の種類も大部分、スパッドおよびニューポールだけであった。
　第一線機についても、フランスの四五一一機、イギリスの三三〇〇機、ドイツの二三九〇機に比べ、アメリカは七四〇機を保有するにすぎなかった。
　それにもかかわらず、全くの準備不足の状態から、航空部隊は他の戦闘部隊と同様に、訓練良好な部隊を戦いに投入できるまでになった。
　アメリカ軍パイロットは、自己の損失二八九機に対し、敵機七八一機を撃降し、ほとんど三対一の驚くべき比率の戦果を示したのだった。