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昆虫の生態
（古川晴男著　図説文庫25　偕成社　昭和30（1955）年刊）

　筆者は明治の生まれで、戦前から戦後の初めまで昆虫博士として活躍しました。
　当時の日本は昆虫の天国といっていいほど、たくさんの昆虫が田舎ばかりではなく、大都会にもいたのです。
　戦後日本は、いち早く欧米の最新技術を取入れた化学工業が盛んになりました。

筆者のことば グラビア 一章　水に住む昆虫 二章　トンボの世界 三章　昆虫の国めぐり 四章　虫の家庭生活 五章　ハチの大家族 六章　アリの社会 七章　チョクのいろいろ 八章　ガの生態 九章　鳴く虫の一生 付録　昆虫採集ノート

そして石炭石油から、農作物の敵であるイナゴやバッタやキリギリスなどをやっつける農薬を大量生産しました。 　また、人間を苦しめていたノミ、シラミ、ダニなどをやっつける殺虫剤も作りました。 　大都会でも下水がなかったので、トイレからは大量のハエが、ドブからは大量のカが発生していました。 　そこで下水を完備して、殺虫剤も使ってハとカエの絶滅に成功しました。 　今では田舎でも昆虫は少なくなり、昆虫を見たければ南の熱帯のジャングルに行かないと見られなくなっています。 　トンボやチョウやホタルを可愛いいと思う人は、当時の昆虫の世界を見てやってください。

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　昆虫の生活を知るには、家のまわりや近所の野原や林で、生きているままの虫たちの姿をよく見るのが何よりもよいのです。
　ところが、虫たちは葉の下にかくれていたり、木の皮の色や形にそっくりだったりして、なかなかその姿がつかめないと思います。
　採集会に皆さんと一緒に行ったとしましょう。
　私はじつにたくさんな虫を見つけます。ところが、皆さんは私の何分の一も見つけることができないでしょう。
　皆さんは見つけかたを知らないからです。
　この本は、そういう見つけかたの手引としても書いてみました。
　こういう手引書の中には「図鑑」類がありますがこれには一つ一つの虫の生活を知る手がかりはあまり書いてありません。
　この本は、「図鑑」のたらない所をおぎなうことにも役立つでしょう。
　「生きている虫」の姿は、標本とはだいぶちがっていて、それは写真に写すよりほかには、伝えようがないものです。
　ところが、日本の昆虫の生きたままの写真は、なかなか集めることができないのです。
　幸い、私のお友だちの有名な写真家たちが、大切な写真を貸して下さいました。
　このような暖い心づかいがなかったなら、この本を作ることはずいぶん困難だったろうと思います。
　心から、次の写真家の皆様にお礼を中します。
　田村栄氏・吉野馨治（こうじ）氏（岩波書店映画部）・福原義春氏・千国安之助氏。

　古川晴男略歴　明治四十年東京に生る、東大理学部動物学科卒業。理学博士。
　現在東京学芸大学教授。主なる著書に「蟻の結婚」「昆虫の国巡礼」等がある。

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