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織田信長と統一への道
（人物日本の歴史8 監修・芳賀登、文・祖田浩一 学習研究社 1984年刊）
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織田信長画像 尾張（愛知県)にうまれた信長は、
強敵と戦いながら、天下統一をめざした。長興寺蔵
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参考文献 信長公記 太田牛一著
明智光秀 高柳光寿著 日本の合戦5・織田信長 高柳光寿著
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長篠合戦図 1575年（天正3年）のこの戦いで、織田信長は鉄砲隊をたくみにつかい、武田勝頼軍をうち破った。
「長篠長久手合戦図屏風」より。徳川黎明会蔵
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1 この巻の時代のあらまし top
●「天下布武」（てんかふぶ）の事業
応仁の乱（足利幕府中期の戦国時代の始まりとなった内乱）のあと、およそ百年間にわたってつづいた戦国の世は、人々の生活を不安定なものとし、下剋上（げこくじょう）の風潮をつくりだしてきました。
各地に登場していた戦国大名たちは、領国の支配を強化し、戦国の世の統一をめざしはじめました。
なかでも東海地方の今川義元、中部地方の武田信玄、上越地方の上杉謙信の三人は、たがいに政略と戦いの攻防をくりかえしながら、天下統一への道をきそいあいました。
しかし、具体的にその第一歩をふみだしたのは、上洛途中の今川義元を桶狭間で討った尾張（愛知県）の織田信長でした。
信長は、ついで宿敵であった美濃（岐阜県）の斎藤氏を破り「天下布武」の大事業に着手しはじめたのです。
「天下布武」とは、「武力をもって天下を治める」という意味です。
信長は斎藤氏の稲葉山城をおとし、ここを岐阜と改名して本拠地としたころから、「天下布武」と彫った印をつかいはじめました。
農業や商業が発達し、交通上のかなめの場所でもあった濃尾平野に勢力をきずいた信長は、京都に近いという地理的条件を得て、「武力をもって天下を治める」という心意気をしめしたのです。 |
那古野城の跡 信長のうまれたところ。
のちの名古屋城の二の丸庭園あたりにあった。
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●反信長勢力の動き
一五六八年（永禄十一年）、足利義昭に助力をもとめられた信長は、近江（滋賀県）の六角（ろっかく）氏を破り、京都の松永、三好三人衆を追って入京しました。
そして、義昭（よしあき）を一五代将軍にたて、室町幕府を再興しました。
信長は、幕府という伝統的な権威を利用して、天下布武の大事業をおしすすめようとしたのです。 将軍とはいいながら、義昭はかざりのようなもので、二人はのちに反目しあうようになります。
京都に入ったものの、信長の前途はなまやさしいものではありませんでした。 とりあえず、近畿地方の要地をおさえましたが、六角、松永、三好三人衆、浅井氏など、まだ信長に反対する勢力が残っていました。
また、義昭を中心に、比叡山延暦寺、越前（福井県）の朝倉氏、甲斐（山梨県）の武田氏、中国地方の毛利氏などといったてごわい相手もいました。
さらに、石山本願寺に指導された一向宗（いっこうしゅう）門徒も、各地で執拗（しつよう）な抵抗をくりかえしたのです。
信長は、このような反対勢力を一つ一つうちやぶる戦略をとり、つぎつぎに制圧していきました。 このあいだに、反信長勢力の中心であった義昭を追放して、二百年あまりつづいた室町幕府がほろびました。 |
織田軍と一向一揆との戦い
『画本信長記』より
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●外国との関係
一五四三年（天文十二年）、ポルトガルから種子島（たねがしま）に伝わった鉄砲はたちまち国産化されて全国にひろまりました。
信長は、この鉄砲に着目し、生産地であった近江（滋賀県）の国友（くにとも）や堺（大阪府堺市）をおさえて大量に買いつけました。
そして、鉄砲を活用したたくみな戦術をあみだし、天下布武の事業をすすめていきました。
鉄砲の威力は、武田氏をやぶった長篠の合戦で実証され、その後、戦いのしかたや城の築き方をかえるほどになったのです。
鉄砲の伝来から数年おくれて、キリスト教がつたえられました。
キリスト教はまず九州に入ってから各地にひろまり、大名をはじめとして信者をふやしていきました。
信長自身は信者になりませんでしたが、キリスト教を保護する政策をとりました。 このため、ヨーロッパの国々との行き来がさかんになり、めすらしい南蛮文化がつたえられました。
パン、ビロード（滑らかな感触の織物）、カルタ、カステラなどの言葉は、そのころの外来語が日本語となったものです。 |
港についた南蛮船 「南蛮屏風」より
サントリー美術館藏
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●信長の政治
信長は、いくたの困難にうちかって天下布武の事業を進めていきましたが、それはたんに信長が、戦い上手の武将としてすぐれていたからばかりではありませんでした。 次々とおこなった新しい政策も、天下統一をおしすすめる大きな力となりました。
関所の廃止、楽市楽座などの政策は、商人の往来を活発にし、商品の流通をさかんにしました。
また、検地は収穫物をえていた寺社などの旧勢力に打撃をあたえました。
農民と武士とをわける制度（兵農分離）もつくりました。
こうした政策をとおして、信長は統一をすすめていったのです。
●「天下布武」の事業の挫折
信長はこれまでにない新しい政策をとりましたが、天下布武の事業の半ばにして明智光秀に討たれます（本能寺の変）。
戦いにあけくれした時代から、ようやくぬけだそうとしたやさきのことでした。
この信長のあとをついで、天下統一の事業をすすめるのは豊臣秀吉です。
天下統一をめざした二人の政権を、名前の頭文字をとって「織豊（しょくほう）政権」とよびます。 また、この時代を二人の居城の名前をとり「安土・桃山時代」とよんでいます。 |
織田家と織田信長の墓
京都市・阿弥陀寺
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2 この巻の主なできごと top
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1534
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織田信長がうまれる。
ポルトガル船が種子島に漂着し、わが国に鉄砲をつたえる。
織田信長が元服（成人式）して、信長を名のる。
信長が斎藤道三（さいとうどうさん）のむすめと結婚する。
信長の父信秀が死去し、信長が家をつぐ。
平手政秀が信長のおこないをいさめて自害する。
信長が清洲城にうつる。
信長が弟の信行をころす。
信長が桶狭間（おけはざま）の戦いで今川義元をたおす。
信長が徳川家康と同盟をむすぶ。
信長が小牧山（こまきやま）に城をきずく。
信長が斎藤竜與（たつおき）のこもる稲葉山城をおとし、岐阜にうつる。
信長が京都にはいり、足利義昭（よしあき）を十五代将軍にする。
信長が命令にしたがわなかった堺の町をせめる。
信長が、ルイス・フロイスに布教をゆるす。
信長が姉川（あねがわ）の戦いで浅井・朝倉軍を破る。
石山本願寺が、浅井・朝倉がたについて兵をあげる。
信長が比叡山の延暦寺（えんりりくじ）をやき討つ。
信長が将軍義昭をいさめて、十七か条の意見書をだす。
德川・織田軍が、三方ヶ原（みかたがはら）で武田信玄軍にやぶれる。
将軍義昭が、反信長の兵をあげる。
信長が将軍義昭を追放し、室町幕府がほろびる。 |
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1574
1575
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信長び小谷城の浅井長政をせめほろぼす。
長島の一向一揆（いっこういっき）が、信長の軍を破る。
信長が長島の一向一揆を全滅させる。
長篠（ながしの）の戦いで、信長の鉄砲隊が武田勝頼（かつより）軍を破る。 |
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1576
1577
1579
1580
1582
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安土（あづち）城がつくられはじめ、信長が岐阜からうつる。
信長が雑賀（さいが）の一揆を討つ。
信長が松永久秀を討つ。
信長が右大臣に任じられる。
安土城の天守閣が完成する。
信長が荒木村重がにげたあとの有岡城を襲う。
石山本願寺が信長に降伏する。
武田勝頼が、信長がたの軍に天目山でやぶれる。
徳川家康が安土城をおとずれる。
明智光秀が家康のもてなし役をはずされ、中国出陣を命じられる。
明智光秀が本能寺に信長を襲い、自害させる。
天王山の戦い（山崎の戦い）で、秀吉が光秀を破る。
光秀がにげるとちゅうで、土民にころされる。 |
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